【シミラボ】CPUを殻割りするメリットとは?

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 自作PCの謎にオーバークロッカー清水が全力で迫る"ちょっと真面目"なコーナー

 CPU内部の熱伝導材がグリスに変更されたIvy Bride以降、ヒートスプレッダを取り外して内部の熱伝導材を交換する"殻割り"が広く行われるようになった。
 熱伝導材を高性能なグリスに変更する事で、熱の伝わりが改善されてCPU温度が低下するのが殻割りの最大のメリットと言われている。
 そこで今回は、Core i7-6700Kを用いて殻割りの効果を検証してみた。計測した項目はCPU温度と消費電力の2つで、殻割り後はグリスと液体金属の2つを熱伝導材として使ってみた。尚、ヒートスプレッダ上のグリスはThermal Grizzly Kryonautに統一している。

 製品保証が無くなる程にリスキーな行為にどれだけのメリットがあるのかチェックしてみよう!

 事前に言っておくが、記事を読んでの挑戦でパーツが破損しても我々は責任を負う事が出来ないので、挑戦される方はエクストリーム自己責任でお願いします!

今回の検証環境

【CPU】Intel Core i7-6700K
【マザー】ASRock Z170M OC Formula
【メモリ】DDR4-2133(バルク)
【グラフィックスNVIDIA GeForce GT730
【クーラー】Thermaltake Water 3.0 Ultimate
【電源】CORSAIR AX1200i
【OS】Microsoft Windows 10 64bit版
【グリス】Thermal Grizzly Kryonaut
【液体金属】Thermal Grizzly Conductnaut

【室温】25℃前後
【温度】HWMonitor 1.29のPackageの値
【電力計】Electoronic Educational Devices Whatts Up? PRO
【ファン設定】全開(ポンプ含む)
【OCCT設定】CPU LINPACK 全コア/AVX有効

 グリス交換の効果は絶大!

 定格から4.8GHzのOC時まで、全域で殻割りの効果が表れているのが確認出来る。殻割り前だと1.35Vを掛けると90℃を超えてしまうが、殻割り後はグリスが78℃、液体金属が64℃と大幅な温度低下が見られる。
 殻割り前だとCPU温度が90℃を超えるため4.8GHzでの長時間の負荷テストは厳しそうだったが、殻割り後は温度が下がったため1時間連続で実行してもトラブルはなかった。
 特に液体金属を使った時は、27℃も温度が下がっているからかVRMのヒートシンクが熱くなる事さえなかった。ソケット周辺のコンポーネント温度の低下は、ケースに組み込んで使う場合に活きてくるだけでなく、長期使用する場合にコンポーネントの寿命などの耐久性の面でも有利に働くだろう。

消費電力への影響はいかに?!

 殻割りによりCPU温度が下がった影響か、意外にも消費電力が全体的に減少している。技術的な詳細は分からないが、発熱が下がった影響でリーク電流が減少した事が消費電力の低減に貢献しているのではないかと予想する。
 特に注目したいのが4.8GHz時で、液体金属にする事で9.6Wも消費電力値が下がっている。高クロック域になればなる程に殻割りによる消費電力低減の効果が表れているので、高クロック常用を目指している人は液体金属を使うメリットがありそうだ。

まとめ
 CPU電圧の昇圧が少なくて済む4.4GHz辺りまでならば、殻割りをしなくてもOC設定を見付けるのは簡単。しかし、昇圧が必要で発熱が増加する4.5GHz以上の場合は、殻割り+高性能熱伝導材はマストアイテムと言える。
 殻割りには、"CPU温度が下がる事でリーク電流が少なくなり、同じ電圧設定でも動作が安定する"というメリットもある。電圧設定のスウィートスポットが広がる事でOC設定がより簡単になるので、OC上級者だけでなくOC初心者にもメリットがあるのだ。
 CPU温度が低下する事で、消費電力やソケット周辺の温度も低下するというメリットもあるが、接着されたヒートスプレッダを取り外すために、物理的な破損の心配があるなど大きなデメリットもある。それに加えて製品保証も無くなるので試すにはそれなりの覚悟が必要だ。